2015年2月16日月曜日

ADempiere と iDempiereの違い

ADempiereとiDempiereの違いについて、
ネットでの情報、特に日本語情報の中に勘違いされやすい情報が多くありますので
ここで、私が知っている範囲で、できるだけ正確にまとめておきます。(2015年2月現在)

■iDempiereは、ADempiereの後継ではない
iDempiereは、ADempiereから派生したプロジェクトであり、後継というわけではありません。

ADempiereプロジェクトも今もなお活動中です。
2015年1月1日付けで3.8.0のLTSがリリースされたばかりで、
かなりたくさんの機能が追加され、生産管理のLiberoモジュールがデフォルト装備となったりしました。

iDempiereだけが活動しているというのは間違いで、どちらも今なお活動中であり
また、ADempiere、iDempiereにそれぞれの特徴があり、これらを比較しても、必ずしもどちらがよいといえる状況ではないといえます。

むしろ、現時点では、先に世に出て動作検証が多くされているADempiereのほうが優れている部分が多い状況であるともいえます。
一方で、ADempiereもiDempiereも、7割8割ぐらいは、Compiereというパッケージのソースコードからできており、同じDNAを持つパッケージであるため、兄弟のようなものともいえます。


■iDempiereは、プラグイン構造になっている
iDempiereは、OSGIによるプラグイン構造をもっており、サードパティがプラグインを開発して追加できる構造を持っています。
これにより、たくさんのサードパーティプラグインが増えていけば、いろいろな機能がプラグインとして提供されることが期待されていますが、現時点ではまだそのような状態にはなく、ADempiereから存在しているモジュールをiDempiere用にプラグイン化していく過程にあるといえます。


■iDempiereは、生産管理機能を持っている??
iDempiereの生産管理には、「Manufactureing Lite」と
ADempiereでの実績がある「Libero Manufacturing」があります。

・Manufactureing Lite
Manufactureing Liteについて、私は詳しくはありませんが、
現在は、MRPがないという状況のようです。
というより、下記のサイトの文言から、むしろMRPは、必要ないという考え方を持っているようで、今後も提供されることはないと考えられます。
http://wiki.idempiere.org/en/NF1.0_Manufacturing_Light

<上記サイト文言抜粋>
Please note that manufacturing methodologies like Theory of constraints or Lean don't require (and even don't recommend) the usage of MRP/CRP.

訳:メモしてください。リーンやTOC理論のような開発手法では、MRP/CRPを必要としない。MRP/CRPをお勧めさえしない。ということを。

この考え方は、個人的には疑問が残ります。
少なからず、日本の製造業企業に生産管理を導入する場合、多くの場合、MRPは必須であると考えますし、ニーズも要件も厳しいと感じているからです。


・Libero Manufacturing
一方、Libero Manufacturing についてです。
Libero Manufacturingは、MRPを実装しており、ADempiereでも実績があるため、
iDempiereでも動作するのではないかと思われる方もいるかもしれませんが
実際に、iDempiereに実装し動作させようとすると、容易にはいかないようです。
少し手直しをしたりしなければいけない部分もありますし
まだまだ動作確認が必要な部分が多くあるように思います。

私のほうでは、本流フローが動作するところまで手直しを加えており
引き続き動作検証中です。
iDempiereの生産管理に指図入庫画面がない

※Liberoは、バグが多いという情報がよくありますが、私はそういう印象を全くもっておりません。
確かにマニュアルや情報が少ないために、正常動作を確認するまでに時間がかかる部分はあり、その途中段階においてバグと判断される嫌いがあるのかもしれませんが、作者の意図を理解し利用方法の習得にいたれば、品質の高いものであることが理解できます。
また、ソースコードを見れば、非常に技術力の高い方が作成されたことも理解できます。 


■JBossとTomcat
ADempiereは、もともとJBoss4で動作しています。
iDempiereは、Tomcatで動作します。そのため、JBoss4の数倍軽くなりました。
しかし、軽快さを手に入れた分、スケーラビリティという点ではJBossに劣ります。
TomcatとEquinoxというEclipseのプラグインアーキテクチャがどこまでの規模のシステムに耐えられるかには、疑問が残る部分です。

一方、ADempiereは、JBossを採用しており、スケーラビリティの不安はありませんが、少し重たい印象はあります。
それを改善するために、日本ADempiereの会では、ADempiereをJBoss7に対応しており、JBoss4に比べて起動時間が大幅に短縮されました。
また、WebLogicやWASなどその他のJ2EEサーバでの開発も可能なようにカスタマイズをしています。


■UI
ADempiereもiDempiereも、ZKFramworkというUIのフレームワークを採用しております。
ADempiereは、まだzk3.6で、iDempiereは、zk6までバージョンアップさせています。

iDempiereでは、グリッド列を動的に並べ替えたり、非表示にしたりが可能になっており、とても便利です。
ADempiere3.8では、テーマを変えることができ、サイトの雰囲気をワンタッチで切り替えることができます。

■技術者のデリバリー
今後、ADempiereやiDempiereの導入プロジェクトが増えていったときに考えるべきことは、技術者のデリバリーの観点です。
この点では、どちらもJavaを採用しており、技術者のデリバリーは比較的容易と思われます。

ただ、ひとつ気になる点は、iDempiereでの開発は、Eclipseプラグイン開発が必須となる点です。
プラグイン開発を経験しているJava技術者は、かなり少数であると思われ、どの技術者も最初は多少の戸惑いがあると思われます。
全体ボリュームからいけば、プラグインの知識を深く必要とする開発は一部であり、大きな課題にはならないと思われますが、観点としては考慮すべき点と思われます。


■現時点での考察(2015年2月現在)
先行者利益という部分で、ADempiereのほうが機能が充実しており、また実績もありますので信頼性も高いといえます。
iDempiereの安定感としては、ADempiereには劣りますが、サードパーティのプラグインが増えていけば、かなりの機能充実が期待されますし、このタイミングで先行して、多少の検証フェーズを加味しながら導入するというのも可能な時期になっていることは確かです。
また、もともとのコミッターの多くがiDempiereにいることも心強いことです。

このように、ADempiere、iDempiereを比較したとき、絶対こっちがいいということを今しばらくは言い切れない状況にあると思います。
ADempiere、iDempiereの特徴を理解した上で、それぞれの要件にあったほうを賢明に選択することが重要であると考えられます。

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