オープンソースERPのADempiereには、強力で実用的なMRP機能が備わっていますが、
何がどこまでできるのかその実態をまとめてみたいと思います。
また、ここでは、ADempiereのオリジナルとしてもともと実装されている機能をまず紹介し
それに加えて、SMBアソシエイツ株式会社により、追加実装した機能を紹介したいと思います。
■オリジナル機能
ADempiereのLibero Manufacturingにもともと実装され動作している機能の主なものは以下のとおりです。
・MRPの基本機能
受注による所要、先行生産による所要、在庫量、仕掛量、安全在庫などを考慮して、正味所要量計算をおこないます。
生産の必要があれば製造指図伝票を作成し、購買の必要があれば購買依頼伝票を作成します。
また、製造指図伝票を作成した場合、その指図で生産される製品の構成品(BOM)から、下位部品や原材料への所要を発生させます。
下位部品や原材料についても同様に正味所要量計算をおこない、必要があれば製造指図や購買依頼を発生させます。
・先行生産
受注に依存しない独立所要を登録する方法と
受注伝票の伝票タイプとして実装する方法があります。
受注はなくても、生産を先行して行いたいケースに利用できます。
・注文パック数量
受注などから発生した需要をこの単位で認識するよう設定できます。
ex.
10個の注文があるが、100個単位の需要として処理するなど。
・注文最大数量
いわゆるバッチ生産数量。
正味所要量計算の結果、算出された生産量がこの値より小さい場合、この数量単位での生産が提案されます。
ある機械を稼動すれば必ず100個単位で生産される場合や、
ある製品は10個20個といった少ない単位では生産せず、300個単位でしか生産しないといった場合に
この値を利用することができます。
・安全在庫量
MRPパラメータとして設定できる。
主に定量発注品などに利用。
・MRP対象期間
MRPの対象となる期間を設定できます。
ex.
未来30日までの所要(受注)だけを対象とするなど。
(30日後以降の受注予定があっても対象としない)
・歩留まり考慮
歩留まり率、歩留まり量を考慮した生産量が提案されます。
・生産リードタイム考慮
生産リードタイムを考慮した、日程を提案します。
・配送日数考慮
配送日数を考慮したリードタイムを計算し、日程を提案します。
・原価計算
工程ごとの作業実績に応じた自動原価計算がおこなわれます。
標準原価計算として、各工程の直接労務費や間接費、その他経費を登録することで自動で工程にかかったコストが計算されます。
また、品目に対して標準原価を登録しておくことで、各工程のコストとの差異が計算され、記録されます。
・MRPのまわしかた
どこ(倉庫)でまわすのか?
どうまわすのか?(MRPリソース)の2つにより、
対象となる製品のBOMが決定され、この組み合わせに対するMRPパラメータを設定できます。
この設計には、知識とテクニックが必要ですが、
要はADempiereのMRPは、設定しだいでMRPのまわしかた、MRPの対象をいろいろと変更できる柔軟性をもっているということです。
各社のMRP運営方法(いつまわすのか、どの頻度でまわすのか、どの部署の誰がまわすのかなど)によってさまざまな設定方法が可能でそれぞれの要件によって決定されていきます。
ex.
前工程だけでまわす、後工程だけでまわす、特定の製品だけでまわす、あるときは別工場で生産するように設定してまわしてみるなど
■独自追加機能
上記に加えて、SMBアソシエイツ(株)では、ADempiereのオリジナルのMRP機能を拡張しています。
(2015年12月現在のもの、今後も随時機能追加予定)
ここでは、そのリストをまず紹介します。
詳細は、別の記事で詳しく紹介していく予定です。
・バッチ生産に対応した指図の分割
・複数工場(マルチプラント)での生産計画の自動認識による所要量計算
・工程ごとの能力を考慮した生産リードタイム計算と負荷積上計算
・工程ごとの稼働日、非稼働日を考慮した生産計画日程の提案
・工程外注への対応
・取引先、出荷先、品目などの組み合わせに対応した配送日数の設定
・複数ロットへの払い出し
・各工程の詳細作業結果など入力機能
・構成品の払い出しロット選択と管理
・構成品の払い出しロットの結合、分割
・安全在庫計算の適正化
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